COLUMN

天候や交通情報に連動したMEO施策|リアルタイムな集客戦略

2025年09月30日

「Googleビジネスプロフィール(MEO)を毎日更新しているのに、決まったお知らせばかりで反応が薄い」「今日は雨だから、きっと客足も遠のくだろうな…」

実店舗を運営されている方にとって、MEO運用は集客の柱の一つです。しかし、その運用がマンネリ化してしまったり、天候という抗えない要因一つで、一日の売上が大きく左右されてしまう現実に、頭を悩ませている方も少なくないはずです。私自身、Webマーケティングのコンサルタントとして、多くの店舗オーナーから「天気が悪い日は、もうお手上げですよ」という諦めに似た嘆きを数え切れないほど聞いてきました。

しかし、もしその「天候」や「交通情報」こそが、MEOで他店と圧倒的な差をつける最大のチャンスだとしたら、どうでしょうか。ユーザーが「今、この瞬間」に求めている情報と、自店のサービスを即座に結びつける。それこそが、ローカル検索で選ばれるための鍵なのです。ここでは、Googleビジネスプロフィール(GBP)を活用し、リアルタイムな情報と連動させて「今すぐ客」の心を掴む、具体的なMEO戦略について、私が現場で見てきた成功例も交えながら徹底的に解説していきます 111111

 

1. 「雨の日限定クーポン」を投稿で告知

ローカルビジネスにとって、雨の日は最大の敵の一つです。多くの人が外出を控え、街全体の人通りが途絶えてしまう。そんな日こそ、MEOの「投稿機能」が真価を発揮する瞬間です。

最も古典的かつ強力な施策が、「雨の日限定クーポン」の告知です 2。これは、GBPの「特典」機能(クーポン発行)や、「最新情報」の投稿機能を使って、雨の日限定のインセンティブを打ち出す手法です。

なぜ、これが驚くほど効果的なのでしょうか 3。

理由は、顧客の心理的なハードルを、インセンティブが上回るからです。通常、顧客の心理は「雨だから出かけたくない(面倒だ)」というネガティブな状態にあります。しかし、そこに「雨の日だけ、ドリンク一杯無料」「お会計から10%OFF」という特別なオファーが提示されると、「面倒だ」という気持ちよりも「今行かないと損だ(お得だ)」という気持ちが勝るのです。

面白いことに、この施策は「わざわざ来店してくれた」という顧客の行動を、店側が承認し、感謝を伝えるメッセージにもなります 44

私が以前コンサルティングを担当したカフェの事例を紹介しましょう 555。当初、その店舗では「雨の日10%OFF」という一般的な告知をしていましたが、反応はいまひとつでした。そこで、投稿の文面をこう変えてもらったのです。

「【本日、雨の日サービス☔】

足元のお悪い中、ご来店いただき本当にありがとうございます。

感謝の気持ちを込めて、この投稿を見たと伝えてくれたお客様に、当店自慢の『自家製シフォンケーキ』を1品プレゼントします!」

結果は劇的でした。単なる割引よりも、「感謝の気持ち」「シフォンケーキプレゼント」という具体的な言葉の方が、お客様の心に温かく響いたのです。お客様は割引額の大きさだけを見ているのではなく、「こんな雨の中、来てくれてありがとう」という店からの「特別扱い」と「共感」を求めているのだと、この事例は教えてくれました 66

この施策のポイントは、GBPの投稿が持つ「即時性」を最大限に活かすことです。朝の天気予報を見て、「今日は一日雨だ」と判断したら、すぐさま投稿する。そのスピード感が、「今、どこに行こうか」と迷っている近隣のユーザーの検索結果に表示され、最後の決め手となるのです。

2. 猛暑日に「涼しい店内で過ごしませんか?」とアピール

雨の日とは逆に、猛暑日もまた、顧客の行動を大きく変える要因です。外を歩くだけで体力を奪われるような日、人々が求めるのは「商品」そのものよりも、まず「快適な環境」です。

この心理を突いたのが、「涼しい店内(避暑)」をアピールする投稿です 7。

「外は危険な暑さです(35度!)。

エアコンの効いた涼しい店内で、冷たいアイスコーヒーはいかがですか?

お仕事や読書にも、快適な空間をご用意してお待ちしています。」

このような投稿は、飲食店やカフェだけでなく、小売店やサービス業にも応用可能です。

私が支援したある書店クライアントは、このアプローチで成功しました 888。真夏の日中、どうしても客足が鈍るのが悩みでした。そこで、猛暑が予測される日に、GBPでこんな投稿を試みたのです。

「東京は猛暑日。当店は『涼しい読書室』です。

話題の新刊も揃っています。熱中症対策に、ぜひ当店で快適な午後の読書時間をお過ごしください。」

結果、どうなったか。普段は立ち読み客が少ない平日の日中にもかかわらず、「少し涼みがてら」と立ち寄り、そのまま本を購入していくお客様が増加したのです。これは、本という「モノ」を売るのではなく、涼しく快適に過ごせる「コト(体験)」を提供価値として打ち出した好例です 9

猛暑日にユーザーが検索するキーワードを想像してみてください。「近く 涼しい場所」「〇〇駅 カフェ 涼しい」といった、切実な「避暑ニーズ」が必ず存在します。その検索に対して、「うちは涼しいですよ」と具体的に手を挙げることが、どれほど強力なアピールになるか。

この施策のコツは、シズル感を伝えることです 10。ただ「涼しいです」と書くのではなく、冷たいドリンクのグラスについた水滴の写真、快適そうな窓際の席の写真などを一緒に投稿することで、視覚的に「快適さ」を伝える。その一手間が、ユーザーの「ここに逃げ込みたい」という欲求を強く刺激するのです。

3. 交通機関の乱れに合わせてテイクアウト情報を強化

天候と並んで、都市部の集客に甚大な影響を与えるのが「交通機関の乱れ」です。人身事故や悪天候による電車の遅延、運転見合わせ。これは、多くの人にとって予測不可能なストレス要因です。

しかし、店舗にとっては、これが突発的な「ビジネスチャンス」に変わります。

「〇〇線、運転見合わせの情報が入りました。

駅で立ち往生されている皆様、お疲れ様です。

〇〇駅東口から徒歩1分の当店で、先に夕飯をテイクアウトしませんか?

温かいお弁当をご用意して、お待ちしています。」

これは、顧客の「困りごと」に、即座に「解決策」を提示するアプローチです 11。

電車が動かず、「いつ帰れるか分からない」「駅のホームは人で溢れている」というストレスを抱えたユーザーは、その場でスマートフォンを取り出し、現状を打開する情報を必死に探します。「〇〇駅 近く ご飯」「〇〇駅 テイクアウト」といった検索が、まさにそれです。

私が以前、ターミナル駅近くの居酒屋クライアントにアドバイスした事例があります 121212。台風の接近で電車が大規模な間引き運転を始めた夕方、私はクライアントに即座に連絡し、GBP投稿を依頼しました。

「【〇〇線 大幅遅延中】

お帰りが大変なことになっている皆様、駅の混雑が落ち着くまで、当店で一杯いかがですか?

雨宿りだけでも大歓迎です!テイクアウトの焼き鳥も強化中!」

この投稿は、帰宅難民になりかけていた多くのビジネスパーソンに届きました。「どうせ待つなら、座って飲んで待とう」「駅のコンビニは混んでるから、テイクアウトして帰ろう」と判断した人々が次々に来店し、その日の売上は、悪天候にもかかわらず前日を上回ったのです。

これは、顧客のネガティブな「待ち時間」を、ポジティブな「食事時間」や「ちょい飲み時間」に変換する提案です 13

この施策の重要なポイントは、アクセスの良さ(例:「〇〇駅から徒歩1分」「〇〇駅の喧騒を抜けてすぐ」)を必ずセットで伝えることです。交通トラブルに巻き込まれているユーザーは、現在地から遠く離れた場所まで歩こうとは思いません。「今いる場所から、すぐにアクセスできる避難場所」としての価値を訴求することが、成功の鍵となります。

 

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4. リアルタイムな情報発信がMEOで注目を集める理由

ここまで、雨の日、猛暑日、交通障害といった具体的な施策を見てきました。では、なぜこのような「リアルタイムな情報発信」が、MEOにおいてこれほどまでに強力なのでしょうか。その理由は、Googleのアルゴリズムと、現代のユーザー行動の両面から説明できます 14

第一に、Googleが「情報の鮮度」を重視している点です。

Googleのローカル検索(MEO)は、ユーザーの「今、この場所で」というニーズに応えることを至上命題としています。昨日正しかった情報よりも、1分前に更新された情報の方が、ユーザーの「今」の判断にとって価値が高いのは当然です。GBPの投稿機能は、従来のWebサイトのブログ更新などとは比較にならないほどの「即時性」を持っています。天候や交通情報といった刻一刻と変わる状況に合わせて情報を発信することは、Googleに対して「このビジネスプロフィールは、今、生きて動いている(アクティブである)」という非常に強いシグナルを送ることになります 15。

第二に、ユーザーの検索行動が「Now検索(今、検索)」にシフトしている点です。

スマートフォンが普及した今、私たちは「いつか行く店」を探すのと同じくらい、「今から行く店」を探します。「渋谷 雨宿り カフェ」「新宿 暑い 避難」「品川駅 電車遅延 暇つぶし」――これらはすべて、即時の問題解決を求める切実な検索です。このような「今、困っている」ユーザーにとって、画一的な店舗紹介よりも、「今日は雨なので、タオルご用意しています」「電車遅延中、テイクアウトすぐ出せます」というリアルタイムな投稿が、どれほど価値ある情報かは想像に難くないでしょう。

第三に、顧客との「心理的なつながり」を構築できる点です。

考えてみてください。「本日のおすすめは〇〇です」という一方的な投稿と、「今日はすごい雨ですね。皆様、通勤・通学お疲れ様です。こんな日は…」という語りかけから始まる投稿 16、どちらに親近感を覚えるでしょうか。天候や交通情報といった「共通の話題」に触れることは、店と顧客という関係を超え、「この大変な状況を共有している仲間」としての意識を生み出します 17。

MEOは、単なる「店舗情報の掲示板」ではありません。それは、地域コミュニティとリアルタイムで対話するための「コミュニケーションチャネル」なのです。この本質を理解しているかどうかで、MEOの成果はまったく違ったものになります 18

5. 天候に応じたおすすめ商品を提案する

「雨の日クーポン」や「猛暑日の避暑アピール」が状況全体に対応する施策だとしたら、次の一手は、その状況と「具体的な商品」を結びつける提案です 19

これは、顧客自身もまだ明確に言語化できていない「潜在的なニーズ」を掘り起こし、「そうそう、それが欲しかったんだ!」と気づかせる高度なテクニックです。

例えば、一口に「天候」と言っても、様々なバリエーションが考えられます。

  • 肌寒い日・気温が急に下がった日:
    「今日は昨日より5度も低いですね。体が冷えていませんか?
    当店の『特製ジンジャーポークソテー』で、体の芯から温まってください。」
    (→「温かいもの」という漠然とした欲求に、「生姜」という具体的な解決策を提示)
  • 湿度の高いジメジメした日:
    「この湿気、気分も滅入りますね…。
    こんな日は、さっぱりとした『冷製トマトパスタ』と『辛口ジンジャーエール』で、ジメジメを吹き飛ばしましょう!」
    (→「不快感」に対し、「さっぱり」「辛口」という感覚的な対案を提示)
  • 花粉の飛散が多い日:
    「今日は花粉がすごいですね。目や鼻がムズムズしていませんか?
    ミントがスーッと香る『オーガニックハーブティー』で、気分をリフレッシュするのがおすすめです。」
    (→「花粉症」という悩みに、「リフレッシュ」という体験を提示)
  • 快晴の週末:
    「絶好のお出かけ日和ですね!
    〇〇公園でのピクニックに、当店特製の『サンドイッチBOX』はいかがですか?ご予約なしでもOKです!」
    (→「快晴」というポジティブな状況に、「ピクニック」という行動を提案)

私が支援しているある小売店では、この「天候×商品提案」が非常にうまくいっています 202020。例えば、梅雨入りが宣言されたと同時に、GBPで「お家時間を格上げする、室内リラックス特集」と題し、アロマキャンドルや入浴剤、読書用のクッションなどを紹介する投稿を実施しました。

これは、天候のネガティブな側面(雨で外出できない)を、ポジティブな室内体験(家でリラックスする)へと巧みに転換する提案です 21。ユーザーは「雨だから仕方なく家にいる」のではなく、「雨だからこそ、家で充実した時間を過ごそう」という前向きな動機で商品を選び始めました。

重要なのは、商品のスペックを羅列するのではなく、その商品が「今のあなたの、この状況を、どう良くしてくれるのか」という「体験価値」を語ることです。その際、湯気、冷たさ、香り、さっぱり感といった「シズル感」を伝える言葉選び 22 と、それを裏付ける写真が、顧客の五感を強く刺激します。

6. MEOと気象データを組み合わせたマーケティング

ここまでは、主に「当日」の状況に応じた即時的な施策(リアクティブ・マーケティング)に焦点を当ててきました。しかし、さらに一歩進んだMEO戦略として、過去の「気象データ」と「自店の売上データ」を組み合わせ、施策の精度を高めていく方法があります 23

いわゆる「気象連動マーケティング」と呼ばれる手法です。大手チェーンなどでは、「気温が1度上がると、ビールの売上が〇%伸びる」「最高気温が25度を超えると、特定のアイスクリームの売上が跳ねる」といった相関関係を詳細に分析し、仕入れ量や広告出稿を最適化しています。

「うちは個人店だから、そんな大袈裟な分析は無理だ」と感じるかもしれません。しかし、大掛かりなシステムは不要です。今すぐできることは、過去の「売上日報」や「POSデータの履歴」と、天気予報サイトなどで確認できる「過去の天気」を突き合わせてみることです 24

アナログな作業ですが、これだけでも自店特有の「勝ちパターン」や「負けパターン」が驚くほど明確に見えてきます。

  • 「雨の日は全体の客数は減るが、なぜか『チーズケーキセット』の注文率だけが上がる」
  • 「気温が20度を超えた週の週末は、テラス席の予約率が急増する」
  • 「月曜日の雨は売上が壊滅的だが、金曜日の雨はそこまで落ち込まない」

私が支援したあるラーメン店では、この簡易分析から面白い傾向が見つかりました 252525。それは、「気温が15度を下回る寒い雨の日は、定番の醤油ラーメンよりも、『激辛味噌ラーメン』の注文率が平均の1.5倍になる」という事実でした。

このインサイト(洞察)が得られてから、彼らのMEO戦略は変わりました 26。以前は、寒い雨の日には「雨の日トッピング無料」といった漠然とした投稿をしていました。しかし分析後は、「【極寒&雨】こんな日は、体の芯から燃える『激辛味噌ラーメン』しかありません。本日、辛さ増し無料!」という、非常に具体的でターゲットを絞った投稿に切り替えました。もちろん、その方が反応率が高かったことは言うまでもありません。

MEOの運用担当者は、単なる投稿オペレーターではありません。自店のデータを読み解き、地域の気候や顧客心理を予測する「ローカル・マーケター」なのです 27。気象データとの組み合わせは、そのための最強の武器となります。高価なツールを導入する前に、まずは手元にある売上データと天気予報を見比べることから始めてみてください。

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7. 顧客のその時の気分や状況に寄り添う

これまで紹介してきたテクニックの根底にある、最も重要なマインドセット。それは、「顧客のその時の気分や状況に、徹底して寄り添う」という姿勢です 2828

天候や交通情報は、単なる物理的な「状況」の変化であるだけでなく、人々の「気分(センチメント)」に直結しています 29

  • 雨の日: 憂鬱だ、面倒くさい、服や靴が濡れて不快だ。
  • 猛暑日: イライラする、疲労困憊だ、何もする気が起きない。
  • 交通遅延: 焦っている、疲れた、ストレスが溜まっている。

MEOの投稿で真に顧客の心を掴むには、このネガティブな「気分」にまず共感を示すことが欠かせません 30

「〇〇線、大幅な遅延とのこと、皆様お疲れ様です…」

「このジメジメとした湿気、本当に気分も下がりますよね」

この一言があるかないかで、投稿が「単なる宣伝」で終わるか、「自分を気遣ってくれるメッセージ」として届くかが決まります。一方的に「クーポンあります!」「涼しいですよ!」とアピールするだけでは、心に響きません。まず「大変ですよね」と受け止め、その上で「だからこそ、当店で少しリフレッシュしませんか?」と提案する。この順序が決定的に重要です。

ある美容室クライアントでの成功例です 313131。ある日、夕方から激しい雨の予報が出た影響で、複数の予約キャンセルが発生してしまいました。通常なら、ただ「本日、予約に空きが出ました」と投稿するところです。しかし、それでは「店の都合」しか伝わりません。

そこで、私たちはターゲットの「気分」に焦点を当てた投稿を試みました。

「本日はあいにくの雨ですね。雨だと気分も沈みがちですが、こんな日こそ、髪を整えてリフレッシュしませんか?

急なキャンセルが出たため、本日17時以降ご来店の方に、リラクゼーション・ヘッドスパ(10分)をサービスいたします!」

この投稿の狙いは、「雨で憂鬱だ」というネガティブな気分を抱えている人に、「ヘッドスパでリフレッシュする」というポジティブな体験をぶつけることです。さらに、「キャンセルが出た」という店のネガティブな状況を、「今ならお得にリフレッシュできる」という顧客にとってのチャンスに変換しています 32。結果、その日のうちにいくつかの予約が埋まり、キャンセルによる損失を最小限に抑えることができました。

MEOは「ローカル(地域)検索」ですが、突き詰めれば「ハイパー・パーソナル(超個人的)検索」です。あなたの投稿が、画面の向こう側にいる「たった一人の、今困っている(あるいは憂鬱な)人」の心に寄り添えた時、初めて来店という行動が生まれるのです。

8. 柔軟な発想がMEOの成果を変える

天候や交通情報は、リアルタイム施策の代表例に過ぎません。このアプローチの本質は、「コントロールできない外部要因」を「集客のフック」に変えることです 33。この視点を持てば、MEOの投稿ネタは無限に広がります。

あなたの店の周りでは、今、何が起こっていますか? 34

  • 近隣での大規模イベント(コンサート、展示会、スポーツ大会):
    「今夜は〇〇ドームでコンサートですね!
    当店、終演時間に合わせて営業延長します。ライブの感想を語り合いながら、冷たいビールで乾杯しませんか?」
    (→検索キーワード:「〇〇ドーム 近く 居酒屋」「コンサート 終わり ご飯」)
  • 地域のニュース(桜の開花、お祭り、テレビ放映):
    「近くの〇〇公園、桜が満開で見頃だそうですね!
    お花見帰りに、春限定の『さくらパフェ』はいかがですか?テイクアウトも可能です。」
    (→検索キーワード:「〇〇公園 近く カフェ」「桜 見頃 スイーツ」)
  • スポーツのビッグゲーム(W杯、オリンピックなど):
    「今夜はサッカー日本代表戦!
    店内の大型モニターで放映します。一緒に応援しましょう!残席わずかです!」
    (→検索キーワード:「〇〇駅 スポーツバー」「サッカー 放映 店」)

MEO運用で成果が出ない店舗に共通しているのは、「自店の言いたいこと(新メニュー、こだわり、キャンペーン)」だけを一方的に発信し続けている点です。もちろんそれも重要ですが、顧客が常に関心を持っているわけではありません。

逆に、成果を出し続けている店舗は、顧客の「共通の関心事(天気、イベント、ニュース)」をフック(導入)にして、そこに「自店の情報」を巧みに結びつけています 35

視点を「店内」から「店外(地域の状況)」に移すこと。それこそが、マンネリ化したMEO運用から脱却し、柔軟な発想を生み出すための第一歩です。あなたの店は、地域コミュニティの中で起きている出来事に、どれだけ敏感になれているでしょうか。

9. 事前に複数のパターンを準備しておく

ここまで読んで、「リアルタイムな情報発信が重要なのは分かった。でも、電車の遅延や突然の豪雨のたびに、ゼロから投稿文を考えて画像を用意するなんて、現実的に不可能だ」と感じた方も多いかもしれません。

その通りです。リアルタイム施策の最大の課題は、その「即時性」ゆえの運用の煩雑さです。

しかし、この問題は「事前の準備」で9割が解決できます 36。

私がクライアントに必ず推奨しているのは、「トリガー&アクション」のパターンを事前に複数準備しておくことです。これは、「もし〇〇が起きたら、△△の投稿をする」というルールを、あらかじめテンプレートとして用意しておく手法です 37。

具体的には、Googleドキュメントやスプレッドシートなどに、以下のようなリストを作成して共有します。

  • トリガーA: 前日の予報で、翌日の降水確率が80%以上
  • アクションA(投稿テンプレート):
    • 文面: 「【雨の日予告☔】明日は〇〇地方、雨の予報ですね。当店では明日、雨の日限定で〇〇サービスを実施します!…」
    • 画像: 「雨の日サービス」と文字入れした画像(準備済み)
  • トリガーB: 当日、気象庁が「猛暑日(35度以上)」と発表
  • アクションB(投稿テンプレート):
    • 文面: 「【猛暑日速報!】危険な暑さです!涼しい店内で『特製かき氷』はいかがですか?熱中症対策にぜひ。…」
    • 画像: かき氷のシズル感ある写真(準備済み)
  • トリガーC: 〇〇線(自店の最寄駅)で30分以上の運転見合わせが発生
  • アクションC(投稿テンプレート):
    • 文面: 「【〇〇線 遅延情報】運転見合わせでお困りの方、駅近の当店で休憩しませんか?テイクアウトも強化中です。…」
    • 画像: 店舗の外観(駅からの近さが分かるもの)とテイクアウト商品の写真(準備済み)

私が支援している多くの店舗では、このような投稿パターンを最低でも10種類以上ストックしています 383838

いざトリガー(雨や遅延)が発生したら、担当者はどうするか。リストから該当するテンプレートをコピーし、GBPの投稿欄にペースト。日付や時間など、一部の表現を微修正し、準備済みの画像を添付して、投稿ボタンを押す。これだけです。この作業なら、わずか3分で完了します。

この仕組みを導入したあるカフェでは、それまで店長の専権業務だったGBP投稿が、手の空いたアルバイトスタッフでも対応可能になりました。これにより、店長が不在の時でも、リアルタイムな情報発信を逃さなくなったのです 39

リアルタイムなMEO施策は、当日の「瞬発力」で勝負しているように見えて、実はその裏にある「準備力」で差がつきます。どれだけ多くの状況を予測し、どれだけ質の高いテンプレートを事前に仕込めているか。それが、成果を左右するのです。

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10. MEOで「今、ここ」のニーズを掴む

様々な施策と運用術を見てきました。これら全てに共通するMEOの本質、それは「今、ここ」のニーズを掴む、ということです 40

Googleのローカル検索(MEO)が、他のWebマーケティング手法と決定的に異なる点。それは、検索しているユーザーの「場所(ここ)」と「時間(今)」が、極めて明確であることです。

  • 「渋谷駅で雨に降られた」ユーザーが、その場で「渋谷 雨宿り カフェ」と検索する。
  • 「新宿で猛暑にやられた」ユーザーが、「新宿 涼しい 休憩」と検索する。
  • 「品川駅で電車が止まった」ユーザーが、「品川駅 テイクアウト」と検索する。

これらはすべて、購買(来店)意欲が最高潮に達している、非常に「熱い」ユーザーです。彼らは「1週間後にどこへ行くか」を悩んでいるのではなく、「この30分以内に、自分の問題を解決してくれる場所はどこか」を探しています。

天候や交通情報は、この「今、ここ」のニーズを、最も強く、そして広範囲に喚起する最大の要因です。

これまで解説してきたリアルタイム施策はすべて、この切実なニーズに対して、「はい、ここにあなたのための解決策がありますよ!」と、検索結果の上で真っ先に手を挙げる行為に他なりません。

従来のSEO(Webサイトの検索エンジン最適化)が、どちらかといえば「いつか行くかもしれない旅行先」を探すような、比較的、時間軸の長い検索にも応えるものだとすれば、リアルタイムMEOは、「今すぐ駆け込む避難所」を探すユーザーに突き刺さる、短期決戦の戦略です 41

天候という「コントロール不可能な外部要因」を、嘆く対象から、「来店すべき必然的な理由」へと転換させる。それが、MEOにおけるリアルタイム・マーケティングの醍醐味です。

あなたのお店は、天気が荒れた日、交通が乱れた日、近隣でイベントがあった日、その状況に置かれたお客様に対して、どんな「助け舟」を出すことができますか? 42 その答えをGBPの投稿機能で発信し続けることが、MEOの成果を確実に変えていくはずです。

 

「なんとなく」のMEO運用を卒業し、リアルタイムな顧客ニーズに応える店舗へ

ここまで、MEO(Googleビジネスプロフィール)運用において、天候や交通情報といった「リアルタイムな外部要因」をいかに集客のチャンスに変えるか、その具体的な施策と背景にある考え方を解説してきました。

この記事でお伝えしたかった結論は、MEOの成果が頭打ちになっている店舗の多くは、発信する情報が「店側の都合」に偏りがちである、という点です。一方で、天候や交通情報、地域のイベントといった「顧客が今まさに直面している状況」に寄り添い、それに対する具体的な解決策(限定クーポン、快適な空間、テイクアウト強化など)をGBP投稿で即座に提示すること。この「即時性」と「共感性」こそが、ユーザーとGoogleの双方から「今、価値のある情報」として評価され、来店に直結する鍵となります。

このアプローチは、顧客のネガティブな状況をポジティブな来店動機へと転換させる、高度なコミュニケーション戦略です。

では、明日から具体的に何をすべきか。まずは、ハードルの低いところから始めてみてください。

  1. 自店の「雨の日」の傾向を振り返る:
    まずは、過去の売上データを眺め、「雨の日に来店してくれたお客様」は、どんな商品をよく注文していただろうか、と思いを馳せてみてください。
  2. 次の「雨の日」に備えて、投稿を1つ準備しておく:
    次の雨の予報が出た時に備え、「雨の日限定〇〇サービス」の投稿文と、それに使う写真を1セットだけ、スマートフォンのメモ帳やPCの下書きとして準備しておきましょう 43。

リアルタイム施策の成功は、当日の瞬発力ではなく、事前の準備にかかっています。天候や地域のニュースを「他人事」ではなく「自店へのフック」として捉え、顧客の「今、ここ」のニーズに応える情報発信を意識すること。それが、MEOの成果を劇的に変える、確かな第一歩となります。

 

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執筆者

株式会社イット 代表取締役

岐阜県恵那市出身。大学卒業後、日本最大級のライブプロモーターに入社しサマーソニックやポールマッカートニー、食フェス等の広報を担当。2021年に飲食店に特化したSNSマーケティング事業を行う株式会社イットを創業。グルメに特化したインフルエンサーマーケティングからスタートしてMEO対策、アカウント運用、広告などを組み合わせ、関西中心に全国で累計1000店舗以上を支援。売上300%や1000万円アップなどの実績を多数もつ。